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Cryptic Writings 
Chapter:4

  第1話 夢

        ―――――――――――――――――――――――
Chapter 4

主な登場人物

 柏木耕一
  鬼。20歳。依然事件のことがくすぶる。
       楓に回復の見込みがないために帰って来た。

 柏木 梓
  同じく鬼。18歳。料理は美味いが性格がきっつい。

        ―――――――――――――――――――――――

Chapter 4:Sweet Child o'mine

 東京近郊。
 何の変哲もない、町並み。平和と共存した危機があちこちに溢れる街。
 だが、普通は何も考える必要もなく平和を享受できる。


 耕一はあの事件以来口数が少なくなり、大学の友人も彼の変化に――敏感な人間は特に――気が付いていた。
 小出由美子もその一人である。
 ただ、以前のように声をかけにくくなってしまって、それ以来疎遠になっている。
 ゼミを休んで留年がほぼ確定してしまったせいではないことは、本人の口からではなく伝え聞いていた。
――父方の田舎にいた恋人が事故で植物人間になったらしい
 そんな他愛もない噂のせいで、声をかけづらくなってしまったのだ。
――二週間ぶりに顔を出したと思ったら…
 以前の柔らかな、隠せないほどの存在感が失われたような気分だった。
 ゼミで出席していてもまだ彼は欠席しているような気がした。

 彼自身はそれに気が付いていないようだった。
 だが実の原因は全く別の場所にあった。それが、自分が関わった事件についてだった。
 柳川の捜査に僅かに関わっただけだが、彼は腑に落ちない嫌な予感が残っていた。
 これを虫の知らせというのなら、恐らく隆山にとって返した時に感じたものよりも強い『予感』だ。
 何か悪いことが起きる。
 それが彼の心を蝕みつつあった。
「…耕一君?」
 声をかけられても、まるでその声が遠くから聞こえているかのような錯覚がする。
「何か用かい。…そういや由美子さん、ゼミに出てたんだ」
 耕一の答えに由美子は若干どきりとした。
 初めて話をした頃の彼とは全く違う人物のように思えた。
 それがどういうものなのかそれは分からない。
 だが、それは生気のない人間が浮かべる表情ではない。
「何よ失礼ね。耕一君だってね、ゼミに出席していないみたいなのに」
 僅かに彼は眉を顰めた。
「…そうかい?それより、何か用があったんでしょ?」
「あ、そうだった」
 彼女は手に持った紙をじゃーんと言いながら見せる。
「え…」
 ゼミのコンパのお知らせ、である。
 このゼミではあまりコンパは開いていない。特に仲のいい同士で飲み会ぐらいはやるのだが。
「日程は来月。クリスマスにやろうと思ってるんだけどさ、時期が時期だから」
 通常、クリスマスには休みになっていることの方が多い。
 どうせ休みの直前というのがお決まりのパターンだが、どちらにせよ早い目の告知の方がいいだろう。
「ふーん。こんなのいつ決めたんだ?」
「耕一君がいない時。参加する?」
 由美子さんは小首を傾げて少し上目に耕一を見る。
「いいよ。幹事は?」
「あたし。んじゃ、参加ってことで」
 ペンでメモしながら彼女は言う。
「…耕一君、最近元気ないでしょ?」
「え?」
「みんな心配してるし、早く元気になってね」
 耕一は苦笑して応えた。
 

 耕一が東京に戻ってからおよそ二週間が過ぎようとしていた。
 噂ではいない間に落雷でガスに引火して爆発事故があったりしたそうだが、別に見に行く程暇ではなかった。
 第一、もう瓦礫ぐらいしか残っていないだろう。
――コンパねぇ
 由美子の表情を思い出しながら彼は考えていた。
 結局隆山に一月近くいたことになるのだ。既にカレンダーは11月を迎えている。
――…本当に久々だなぁ
 色々あったせいで、彼はこっちの生活の事を忘れていたような錯覚を覚えた。
 そのせいで、少しぼうっとしていたのだろう。

  どん

「おっと、すいません」
 彼は反射的に謝って身を引いた。
 ぶつかった人影が倒れて、小さくうめき声を上げる。
「大丈夫ですか?」
 すく、と立ち上がった少女は、不思議そうに一度耕一を見るとついっと顔を背けて再び歩き出した。
 一瞬むっとしたが、その時の表情がやけに印象的で、何も言えなくなった。
――…目が少しおかしかったような気が…
 確かに耕一の方を向いたようだが、彼女の目に彼が映っていたのかどうか、それは分からなかった。
 既に背中を見せて歩きはじめた彼女を見やって、彼はため息をついた。
――このごろの高校生はおかしなのが増えてるんだな
 ふらふらと足取りに不安が残る彼女には、実は再び会う機会があるとは、このときは思ってもいなかった。
 

 バイトを終えて、暗い下宿に――今では彼の自宅と言うべきかも知れない――帰って来ると、彼は留守電のスイッチを入れた。
 楓の一件があって以来、彼は常に留守電を取るようにしている。
 いつでも、隆山からの連絡を記録できるように。
 だったら携帯を持てばいいじゃないかというかも知れない(大学の友人にも言われた)。
 それがめんどくさいからだ。
  理由は分かる。でも、携帯だと何故か自分が縛り付けられるような気がしてならなかった。
『一件目』
 電子音の後、聞き慣れた声が聞こえた。
『ああ、耕一?えーと…11月21日からの休み、行くから』
 時刻を確認する。今日の昼過ぎ。どうやら昼休みか何かを利用したのだろう。
 と、妙に落ち着いてカレンダーを見る。
 11月21日。土曜日だぞ?土日明けの勤労感謝の日はともかく。
 いや待てよ、でもあいつは高校生じゃ…
 はたと気づく。法改正により、高校生は第二第四土曜日は休みになっている。
――…今日は20だぞ、おい
 いきなり来ることを決めたんじゃないだろうな。
 耕一は自分が向こうへ行く際の時間を計算して指折って数える。
 …来る。
 奴なら、今日中に来かねない。
 だがもう夜中だぞ?まさか…
 以前この下宿の場所を勘づかれたことがあった。別にやましい事をしていたわけではないが。
 耕一はため息を付いて、取りあえず掃除をすることにした。

 もうだいぶ寒くなってきた。夜中の9時ともなれば、部屋の中でも十分指先が動かなくなる。
 彼は短縮ダイヤルを入れて、隆山の柏木の屋敷に電話をしてみることにした。
 数回の発信音の後、がちゃりという音が聞こえた。
『はい柏木です』
 初音ちゃんだ。
 まだ起きてたのか、という疑問はともかくとして彼は聞いた。
「ああ、耕一です。あのさ、実は聞きたいことがあって…」
 電話の向こうが騒々しい。初音ちゃんも電話口で驚いたかどうかして、千鶴さんを呼んでいる。
「…あの?初音ちゃん?」
 返事はなく、代わりに受話器を取る音が聞こえた。
『耕一さんですか?』
 千鶴さんだ。
「は、はい。何かあったんですか?」
『梓が急にいなくなったんです』
 ぴん、と来た。
 梓の伝言から想像するに、これは家出か。
「急に?千鶴さん、実は自分の留守電に梓の声でこっちに来るって…」
 千鶴さんの硬直する気配が、受話器を通して感じられる。
「梓、何も言わなかったんですか?」
 というより、あいつ一人でここまで来る気か?
『…ええ、一言も言わずに…』
「それって、いつ頃ですか?」
 一瞬ひやりとした予感に、彼は聞いた。
『少なくとも夕食を作ってからですから…』
 一つの不安が解消された。千鶴さんの料理ではないようだ。
『6時頃ではないでしょうか』
 なに?
 うまくいけば終電に間に合う時間帯だな。
 耕一は戦慄が走るのを止められなかった。
『…耕一さん?』
 急に黙り込んだ彼を訝しがった声が、彼を現実に引き戻した。
「分かりました、もしかすると今日中に顔を出すかも知れませんから、連絡入れます」
『そうして下さい』
 

 無意味な映像が流れる。
 どっかの宗教団体がどうしただの。
 新興宗教には変な物が多い。
 ある宗教団体は破壊行為を正しいと説き、麻薬や電気椅子のようなもので洗脳しているという。
――下らない…
 だが、そんな非現実的な内容はどうでも良い。
 いい加減、こんな夜中までテレビを見て無為に過ごしたのは久々だった。
 それもこれも、梓が来るかも知れないから、起きている必要があったからだ。
 時計が11時を指そうかという頃。流石にもう瞼が重くなってきて、どうでもいいやと思い始めて腰を上げた。

  こんこん

 不意に扉が音を立てた。
 そして、もう一度。

  こんこん

「…」
 不機嫌そうな半眼で彼は扉を見つめた。
 木でできたこのぼろい下宿の扉には、窓もお飾りのような物しかついていない。
 それも、飾りガラスで、電気を付けていても透ける事のない奴だ。
 そぉっと近づいて、気配を消して扉に身体を押し当てる。
 せめてもの報い。脅かしてやろうと言う腹だ。
 押し当てた耳に、梓の気配が伝わってくる。
 扉に触れた手が、躊躇うように引き戻された。
――やばい…
 耕一の頭の片隅には、扉を蹴破るという案がすごく魅力的にも思えた。
 いやいや。夜中の都心で梓がそこまで馬鹿な事をするようには思えない。
 一応いいとこの御嬢様で通っているはずだ。
 果たして、代わりに聞こえてきたのは躊躇うようにうろうろする足音。
 しばらくしてそれも止まる。
 何の音も聞こえない静かな世界。
 耳を押し当てた木の冷たさに、耳たぶの感触が奪われていく。
 ほんの一瞬でもものすごく長い時間の様に感じられ、そしてその静けさはあまりにも重かった。
――…少し可愛そうになってきたな…
 鬼の聴力を使えば衣擦れの音も聞こえる。
 なのに、目の前の梓は何も音を立てずにそこにじっと立っているのだ。
――まて、梓じゃないかも知れない
 しびれを切らせた彼は、身体を起こして鍵を開けた。
「…はぁい?」
 顔を出した時、妙な物が目に入ったような気がした。
 いや、そこに梓はいた。確かに梓だ見間違うはずもないが…
――どうしたんだ?
 妙に元気がない。
 梓の顔をした偽物と言えば、それを素直に信じてしまいそうなぐらい、目の前の女性から覇気が感じられなかった。
 星明かりだけが頼りの暗さに、彼女が完全に沈んでしまっている。
「こ、こんばんわ」
 そしてぎこちなく挨拶すると、ぺこりと頭を下げた。
 梓の趣味にしては落ち着いた黒のコートと、皮の手袋。
 ちょっと考えればそれがかなりの値段のはる物だと気が付きそうだが、ただの大学生には分からない。
――違う。セイカクハンテンダケでも食べたんじゃないのか?
 いや敢えて口に出すほど愚かではない。もし違ったら拳が振ってくる。
「…こんな夜中にわざわざ来る程の事か?」
 彼が身を引くと、梓がそれにつられて入ってくる。放って置くと鍵をかけないかな、と思ったが彼女はきちんと鍵をかけた。
――…おかしい。あまりにもおかしい
 この間の一件以来、彼女の様子はおかしかったが、耕一は心配になってきた。
 しかし、と言うことは梓があまりにも不憫である。普段どんな風に彼女が思われているのか。
 

 取りあえず鳴りっぱなしのテレビを消すと、まず千鶴さんに電話を入れて梓が来たことを伝えておいた。
 どうやら、向こうでもある程度『来ること』を予想していたらしい。やはり彼女は起きていた。
――様子が変なのは、千鶴さんにもわからないか…
 電話を切ると部屋に戻って、まだ突っ立っていた梓を取りあえず座らせる。
「何にもないけど…って、別に遠慮する事はないしな」
 一応のちゃぶ台にお茶をおいて自分も座る。
「…さてと。何でわざわざ、こんな夜中になるのを知っててここまできたんだ?」
 視線をそらせる。
 戸惑ったような表情を浮かべてちゃぶ台の上を視線を巡らせて、そしてうつむいてしまう。
「…」
「…ごめん」
 耕一が口を開こうとすると、梓が小声で言った。消え入りそうな声だ。
「あたし…その…急に押し掛けて、ごめん」
 小刻みに肩が震えている。
 この部屋が寒いだけではないようだ。
「…どうしたのか、理由ぐらい教えてくれよ。まあ、明日から休みだから落ち着いてから話せば」
 しばらく全身を緊張させて震えていたが、それが収まると顔を上げた。
 普段の美少女顔も、急にくたびれてしまっていた。
「夢を見るようになったんだ」
 彼女はどこか疲れた表情を浮かべながら、目だけは取り憑かれたように輝いている。
「…夢?」
 耕一は少しだけ心当たりがあった。
 鬼。
 柳川が覚醒したかどうかの前後の時に、こんな感じの表情を浮かべていた気がする。
「うん。…いつの時代のどこの話か分からないんだけど、妙な夢なんだ」
 真っ暗な夢の中で、大きな満月だけが輝いている。
 少し離れた所に、小柄な、見たこともない装束を着た女性が立っている。
「…知っている人物のようで、どうしても思い出せない」
 その女性は哀しそうな目つきをしていたが、梓を見ている訳ではなかった。
 別の方向――彼女の向く方には、こちらには一目で時代を感じさせる男が立っていた。
 髷こそまともに結っていない物の、侍の出で立ちだった。
「それを見ているといても立ってもいられなくなるのに、何もできないんだ」
 耕一は話を聞きながらそれがエディフェルと次郎衛門のなれそめであることに気が付いた。
 しかし、そのシーンには彼女はいないはず。
 彼女にその記憶があるはずはない。
「いつ頃からそれは」
「…耕一が帰る、数日前ぐらいから。それが、初めは一週間に数回程度だったのが最近では毎晩」
 そして、彼女は両拳を震える程握りしめる。
「楓の世話をしている時の事だったと思う。…うつらうつらしてたら…それが…」
 過去の記憶でも戻りつつあるのだろうか?
 それは良いことではないかも知れない。
「自分が、おかしくなってしまうと思った」
 夢を見る原因は恐らく楓ちゃんだ。
 耕一は楓が思考を信号に変える能力に長けている事を、十分に思い知らされている。
 恐らく。
 と言うことはまだ楓は死んでいないと言うことになるが、梓にとってはそれが逆効果になっているようだ。
 梓は良くも悪くも思いこみの激しい所があり、勝手に自分の中に沈んでしまう事がある。
 激情に流されやすいとも言うが、今回はそれを制しようとしていた。『姉』として。
「…それで、こっちにきたのか」
 こくり。
「分かった。ほんの3日の休みだけど、ゆっくりしていけよ。お前がそんな元気のない顔をしてたらみんなも嫌だろう」
 彼女は力無く頷いた。

 取りあえず寝ることにしたが、梓には悪いが布団がない。
「俺の布団で良ければ、貸すから」
 以前に彼女が――その時は千鶴さんを除く姉妹で来たが――来た時には季節は夏。
 それにあの時は千鶴さんがつてを使って近くの宿を取って、そこに泊まっていたのだ。
 一度どんちゃん騒ぎをした日は、勢い余って一人ここに倒れていたが。
 今は11月も末、冬真っ盛りという時期だ。貧乏学生ではストーブの暖などとれるはずもなく。
「…耕一は、どうすんのさ」
 当然の質問だろう。
 彼女はコートを脱ごうとしない。それだけ部屋が寒いと言うことだ。
 ちなみに、耕一は上下ウィンドブレーカを部屋の中で着込んでいる。
 その下は言うまでもない。
「…どうするっつーたって…」
 少し恨みを込めた視線を梓に向けるが、今の彼女を虐める程、人間ができていない訳ではない。
 そんな事ができるのは鬼だ。
 いや、鬼だけど。
「ねぇ。お前がそんなこと気にするなよ。ここは俺ん家だし、俺は俺の寝場所を作るさ」
 言いながらちゃぶ台を片づけ、布団を広げる。
「同じ部屋に寝る訳にいかないだろ」
「あたしは…」
 耕一が彼女の言葉に割り込んで首を振る。
「いいから。いーか?お前がどれだけがさつで乱暴だって言ってもだな、女の子を放り出して布団でのうのうと寝るのは…」

  ぴくり

「…あずさ?」
 耕一の声が裏返る。
「あ、梓さん?」
「だーれーがー」
 うつむいていて、彼女の顔は前髪に隠れて見えない。
 ぎゅっと握りしめられた拳がぷるぷる震えている。
「がさつで、乱暴者だぁっ」

  づどむ

 その拳は綺麗に鳩尾の沈んでいた。
――元気じゃねーかよ…
 心配して損した。
 彼はゆっくりと暗くなる視界を感じながら、そんなことを考えていた。
 
 
 その夢は、妙に現実味のある夢だった。
 暗い月夜の河原。

 印象的な世界。それは夢という空間でありながら確固たる世界の息吹を持っている。
 生命の息づかいも、月の輝きも、風の薫りも、水の立てる音も、葉擦れの細かな音も。
 全て、全てがあまりにも生々しい。

「う…」
 彼は見慣れぬ天井を見上げて身体を起こした。
 記憶の混乱に額を押さえ、必死になって思い出そうとする。
 謝る梓を布団に寝かせて、自分は隣で寝たのだ。
 本来自分が寝るべき場所には彼女が寝ているはずだ。
――畜生、思いっきり殴りやがって
 まだレバーが痛い様な気がした。
 彼はウィンドブレーカの上にマウンテンパーカーを羽織ってソックスを履いて、上にジャンパーをかけて寝たのだ。
 寝苦しい事この上ない。
――…かといってあいつの側にいるとなぁ
 他の連中ならともかく。当たる物があるから…

  ぶんぶん

 耕一は気を静めるために頭を振った。
 取りあえず着替えをして、顔を洗いに行く。
 と、ほとんどお湯を沸かす以外に使われていないガスコンロの音と、何かが煮える匂いが鼻をついた。
「あ、おはよ。台所借りてるから」
 梓の方が先に起きていた。
 しかも何故かきっちり片づけられた台所で料理なんぞしてるし。
「あ…ああ、あ…」
「材料とか包丁とか調味料はあんまりなかったからそれなりだけどさ」
 耕一はそれ以上声も出せず絶句している。。
 恐らく他人からしてみればかなり羨ましい環境には違いないのだが。
――どうなってるんだ?
 それよりも驚いたのは台所の状況だった。
 恐らく一人暮らしの台所と言えば、洗い物が積み重ねられて汚らしい物だろう。
 耕一の場合、ゴキブリが住処を求めて逃げるほどの有様だったはずなのだが、今やそれが人並みにまで回復している。
「…どうしたの?」
「いやどうしたって…」
 馬鹿みたいにあんぐり口を開けていた彼は、それを強引に手で閉じると顔をぱちんと叩く。
「ありがとう」
 取りあえず礼を言うことにした。

 次回予告

  「多分、回復の見込みはありません」
  唐突に告げられた医師の言葉。
  耕一と回復した梓に告げられる、千鶴からの電話。
  釈然としない耕一に、梓は思わぬ告白をする。

  Cryptic Writings Chapter 4:Sweet Child o'mine 第2話『現』

   …あたしじゃ、だめなのかな

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