コンサート
無理を言わなくても切符は手配してくれる。
多分、他の人から見れば羨ましいだろう。
チケットべあでも販売即売り切れの由紀のコンサートのチケット。
朝寝坊したら、ポストの朝刊に挟んであった。
そんなわけで、今悠々と会場に向かっている。
駅を降りてすぐのところだ。
「券買うよ券買うよ〜。余ってる券買うよ〜」
ダフ屋だ。
犯罪なんだけど、何故かまかり通っている。
自覚ねーんだろうな、どうせ。
それに、儲かりすらしねーだろうに。当日限りの切符なんぞ。
「アリーナあるよ〜」
だから、どういうルートで手に入れたんだよ。
群衆が半ば馬鹿にするようにして彼らを見つめながら歩いていく。
しばらく行くと群衆の雰囲気が変わる。
奇妙な物を見る視線と、ざわめき。
「券いらないよ券買わないよ〜余ってても買わないよ〜」
はるかだ。
…何やってるんだ、あんな所で…
「あ、冬弥、券余ってるんでしょ?でも券買わないよ〜」
「こっ、こら、名前を呼ぶなっ」
「だから券買わないってば」
「…何やってるんだよ」
「ダフ屋もどき」
いつか殺されるぞ、お前。
因みにコンサートの帰り、まだ彼女はのたまわっていた。
一体何しに来てるんだろう…