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ましろとまくら そにょ9


※ 注意
  この作品に登場するまくらおよびましろは、Leaf(アクアプラス.co)の作品『まじかるアンティーク』に
 登場するかも知れないキャラクターであり、オリジナルではありません。
  あしからず。まだ出ていない方も、まくらは探さないでください(^^ゞ

    ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 前回までのあらすじ
 長瀬に、魔力のバランスが崩れているという話を聞いた。

「リアン、スフィー、ちょっと来てくれ」
 夕食が終わって、健太郎は二人を呼んだ。
 まだまくらはもくもくと食事を続けている。
「けんたろけんたろ、何かするの?」
「誰かと思っただろ!」
 ?と首を傾げるまくら。
「スフィー」
 スフィーはえへへと舌をだして笑う。
 まくらが?まーくを盛大に飛ばしているのを、ましろが捕まえてしまう。
「まったく…ちょっと大切な話だ。特に」
 と言ってまだ食事を続けながら話をしている二人に視線を送る。
 ましろは早く行けと言わんばかりに目線を飛ばしてくる。
「あの二人に関係することだ。詳しいことを知りたくてね」
「…何の話ですか」
「魔法の話だよ。お前達の方が詳しいだろ」

 ましろとまくらは人間ではない。
 皿から生まれた、兎の絵の精霊――意識のあるお皿、だ。
 それなりの人間に作られたそれなりに古い皿なので意識を持った――妖怪とも言う――のだろう。
 グエンディーナの言葉で言えば、それもやはり魔法の類になるのだそうだ。
「…で、長瀬さんが、バランスが崩れてるって」
 ふん、とスフィーが目尻を上げて鼻息も荒くする。
 リアンは深刻そうな表情を浮かべているが、スフィーはどうにも機嫌が悪い。
「どうしたんだ?」
「…どーしたもこーしたも…あんた、忘れてるでしょ」
「何を」
「自分が魔法で生きてるって話」
 ああ、と言って手をぽんと叩く。
 忘れていたのではなく、思い出すとスフィーに対して殺意が湧くのであまり考えないことにしていただけだ。
「そう言えば俺はお前に殺されたんだっけ」
「人聞きの悪いことを!」
「事実じゃん」
 う、と口ごもってぷしゅうと小さくなってしまうスフィー。
「…だからこうやって無理してでも助けてあげてるってのに…ぶつぶつ…」
「それはいいから。そんなことよりもそれとどういう事が関係あるんだ」
「それはこういうことです」
 小さくなったスフィーの代わりにリアンが口を開いた。
「私達がここにいること、魔法を使うこと、そしてここに歴然とした魔法が存在すること」
 リアンは考えるように少し首を傾げる。
「恐らく、既に手遅れではないでしょうか」
 え?と?マークを頭の上に飛ばす健太郎。
 立ち直ったスフィーが、やはり不機嫌な表情をして言う。
「歪みきって簡単には元に戻せないってこと。もう」
「ふーん、そうか…って、おいっ」
「つまりはそう言うことです。ましろさん達が現れたのも、もしかしてそういう歪みが原因なのかも知れません」
 ましろとまくらが、ここの魔法の歪みの証拠?
 健太郎はあまりに奇妙なものを想像してしまったので頭を振った。
「その原因だっていうのよ、あんたが生きてることやあたし達がここにいることが」
 スフィーの機嫌が悪い理由が判った。
 ここが歪んでいる一番の原因が、『自分だ』と言われた気がしたのだろう。
 やっと気がついた彼は、じぃっと彼女の顔を覗き込むように見つめた。
「な…なによ」
「いや。でも、歪みってなんだ?」
「う…」
 彼女は困った顔をして頬を染めると、目をちらっとリアンに向ける。
 リアンは目を大きく見開いて、人差し指で自分を指さす。
 こくこくうなずくスフィー。
 ぶんぶん首を振るリアン。
 ブロックサインのように腕を大きく振るスフィー。
 驚いて、両手を自分の前で振るリアン。
「…あのねぇ、お前ら」
 いつの間にか手話で(ジェスチャーか?)会話する二人に、健太郎は呆れて声をかけた。
「難しいんだったらいいよ」
『え゛』
「言いたいのかよ」
 結局どっちなんだ、そう言う彼に促されて、リアンが口を開いた。
「えっと…健太郎さんは、磁石のお話は判りますか?」
「え?うん。磁石って、NSのあの磁石でしょ?」
 こくり、とリアンは頷く。
「磁石の回りって、磁力線の立場から、『歪んでいる』っていうことは理解できますか?」
 健太郎が目を丸くしているうちに、スフィーはどこからか紙を取ってくるとリアンにペンを渡す。
 リアンはそこに一本の磁石の絵を描く。
 そして見慣れた磁力線の図を書くと、ペン先をくるっと一回転させて磁石の先端を差す。
 そこからは、噴水の水のように磁力線がわき出ている。
「ここに鉄を置くと、磁力線に沿って磁石は引き付けられますよね。
 これ、鉄の立場からしてみれば磁力線の方向に落ちていくみたいですよね。
 この場合は磁力線の密度の差が、この図のように傾斜しているっていってもいいです。
 だからこれを、『歪んでいる』って言うんです。
 …難しいですか?」
 健太郎は頬を引きつらせて頷く。
 何を言いたいのかは判るが、よく判らない。
「あー…つまりその、五月雨堂が魔力の集中で魔力からすれば歪んでるって事を言ってるのね」
 ぱっとリアンは顔を明るくした。
「そうですそうです!」
 いや、そんなに喜ばれても。
 判らないものは判らないんだから。
「…すると、鉄か何かが引き寄せられるの?」
「『魔界』が引き寄せられるの。今の話の流れで、理解できないの?」
 とは機嫌の悪そうなスフィー。
「魔力バランスのずれが、マナの濃度差から現れてます。そして、その等魔力面の傾きによって滑る…」
 云々。

  すぱこんっ

「ねるな!」
「ねるわ!んな訳の解らない話を聞かされたら!」
 そうこう言い争っている頃、食卓では。
 むぐむぐ。
「ましろぉ」
 むぐむぐ。
「…ましろぉ」
「お姉さまと呼べと言っただろうっ」

  ぱこっ

「…嫌。まくらちゃんましろをおねえさまなんて呼ばない」
 かた、と箸を置くと、きっと彼女を睨み付けるましろ。
 でもまくらも譲らない。
「やだ」
 一度言い切ると、簡単に譲ろうとしないのが妹の悪いところだ。
 妙に頑固なのは、多分制作者に似たのだろう。
「…判った、んじゃ、私の名前以外で呼びやすい呼び方にしなさい」
 はぁ、とため息をついて言うと、まくらはにこっと笑う。
「うん、しろちゃん」

  すぱこーん

「よけー悪いわ!私はなんだ?お前の姉だぞ!」
 あんまり勢いよく言うのでびくっと縮こまると、すんすん泣き始める。
「うー…」
 甘やかすと良くない。
 泣き入ったぐらいで赦すのは良くない。
 ましろは心だけを鬼にして、ぷいっと顔を背けた。

  すんすん

「…じゃぁ、なんて呼びたいんだ」
「っ…ましろ」
「お前は実の姉を呼び捨てにするのか!そんなに不躾だったか?誰がそんな風にしつけたんだ!」
「ましろ」
「…」
 頬をぽりぽりとかいて、彼女は頭を抱え込みたくなった。
「…それは後でもいいんだけど…」
 しばらくの沈黙の後、まくらが切り出した。
 ましろの顔の下から覗き込むように。
「何か隠し事、してるでしょ」
 え゛。
「ほら。ましろ、隠し事するとここんとこ引きつってるんだよ」
 そう言って目尻を人差し指でちょんと触れる。
 彼女は完全に眉を歪めて、冷や汗を垂らしたまま妹のにっこりとした笑みを見つめる。
「…隠すって…ほどのことではない。今健太郎殿に調べて貰っているんだ」
「何を」
「…私達が、ここにいられるかどうかをだ」
 ましろは今までにないぐらい厳しい目つきで自分の妹を見つめた。
 多分ましろもその視線を見て気が付いたのだろう、驚いたように目を丸くして、片手を口に当てる。
「追い出されるの?」
「違う。迷惑がかかるかも知れないと言うことだ」
「…まくら、迷惑?」
「なにも私達が迷惑してるわけじゃない」
 まくらは迷惑かも知れない。
 一瞬頭をよぎったが、それは考えないことにした。
「説明するのが難しいんだ、取りあえず食事を終わらせろ」

「魔界が引き寄せられるってのはどういうことだよ、結局」
 スフィーとリアンは顔を見合わせて、そして肩をすくめた。
「…まぁ、魔力が溜まりにくくなるけど、そのかわり『魔法』は集まるのよね」
「それってつまり」
「そ、ましろとまくらみたいんがもっと来るって事」
 …まぢ?
 声にならない声がする。
「長瀬さんが言ってたのって、そーいう事だったのかなぁ…」
「でもそれじゃバランスって崩れるんじゃないの?」
 ちちち、と人差し指を顔の前で振るスフィー。
 でも、全然決まらない。
 妙に可愛らしくなるだけ。
「逆よ逆。そう言うことでバランスがとれるの。もとから五月雨堂って、そういう魔力がおおいとこだから」
「魔法ってのは魔力を消費するんですよ。…だから、魔力が+だとしたら魔法は−」
「…んと、つまり、魔力が切れれば魔法はなくなるから」
「そーゆーこと♪よくできました♪」
 びしっと親指を某宣伝のように振り上げてきめぽーず。
 どうやらましろ達がここにいるのは、むしろ良いことらしい。
 それは逆に、スフィーやリアンがここにいても問題ないと言うことでもある。
「あれ?じゃぁ、逆に魔法は使った方がいいのかな?」
「…そーかもしんない。魔法の存在は回りのマナを吸収するので歪みは生じるんだけど…」
「まぁ、原因である魔力は減るよね」
 むしろ魔法を使う事自体、感謝すべき事なのかも知れない。
「んだったら、ましろにも言ってこないとなぁ」

 三人で食卓に向かうと、ましろは半狂乱でまくらに叫んでいた。
「っっっ!まくらっっ!そこになおれっ!今からてってーてきに教育し直してやる!」
「やだっ!やだったらやだ!ましろはましろだもん、おねーさまなんて呼んでやらないからっ」
 どうやらまだ『ましろ=お姉さま』論争は終わっていなかったようである。
 彼女はどうしてもお姉さまって呼んでもらいたいらしい。

「やだぁっ!おねーさまなんていやだっ」


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