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ましろとまくら そにょ12


※ 注意
  この作品に登場するまくらおよびましろは、Leaf(アクアプラス.co)の作品『まじかるアンティーク』に
 登場するかも知れないキャラクターであり、オリジナルではありません。
  あしからず。まだ出ていない方も、まくらは探さないでください(^^ゞ

    ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 ある日のこと。
 ましろが、いつになく真剣な顔で健太郎の側に来た。
「ちょっと相談がある」
 む…
 ちなみにましろは『可愛い』部類に入る顔をしている。
 まじめな顔をすると、意外に魅力的である。
 ただし、どうも力が抜けそうな雰囲気がする。
「今更改まって、何だい」
「アルバイトをしようと思うのだが」

 その日は朝から機嫌が悪かった。
 多分今までなく不機嫌に違いない。
 むすーっとしてて、朝食も乱暴に食べる。
 時折いじけたような表情を浮かべたと思うと、また眉を吊り上げる。
「…どうしたんでしょう」
 リアンが心配そうな顔で、まくらの様子を見ている。
「うん」
 頷くが、健太郎もその理由は知らない。
「どう、こんなものかな?」
「似合うだろうか?」
 隣の部屋で服を見て貰っていたましろと、スフィーがやってきた。
「あ、うん、いいです。へぇ…」
「うん、凄く似合うね。なんていうか意外だ」
「…褒めてないぞ、健太郎殿」
 ましろは、これから面接のために出掛けるところだった。
 大分こちらに馴染んできた彼女は、『お世話になるだけでは』と申し出てきたので、全員で協力することになったのだ。
『わ、声掛けてくれればいいのに』
 多分結花なら嬉しそうに協力してくれるだろう。
――まぁ、いつも世話になるのもあれだし
 それ以外の理由もあって、今回は引き下がって貰うことにした。
 だからましろのスーツは知り合いの貸衣装で借りてきた。
 髪型は大きく変えずに、結わえる部分を上まで持ってきてポニーテールにしてみた。
 元々前髪も全部後ろに流しているから、結構似合う。
 …でこ。
「じゃ、昼頃までに帰れると思う」
「うん、ご飯用意してるから」
 何のバイトか知らないが、紹介してやる前に『もう見つけてあるから』ということだった。
 詳しくは帰ってきてから聞くことにしたが、張り切って出ていったので気にはなる。
――何のバイトだろう
 どっかのファーストフードの店員。
「いらっしゃいませ」
 …どこか違う。どうもこう、マニュアルどおりに話させるとましろぢゃない。
「御足労御苦労、お客人、今バリューセットがお得だ」
 これも変だ。ツーか誰だお前。
 第一スーツ着ていったんだし…ホテルか何かのバイトだろう。
 ああいうのは社員扱いなんだって、誰かが言ってたし。

  つんつん

 いつのまにかまくらが側にいた。
 肩をつつかれて振り向くと、やっぱり不機嫌そうな顔をしている。
「まくら?」
「けんたろ」
 ぐ、と口元を歪める。
「ちょ、ちょっとまてよ、泣くなよ、何だよ、どうしたんだよいきなり」
「……」
 じーっと上目で彼を見つめて、くいっと上着を引く。
「あのね、昨日の夜なんだけど」

 まくら達には部屋が一つ割り当てられている。
 要するに寝床だ。
 しょっちゅうというかいつも実体化しているので、寝床まで用意する事になった訳だが。
「まくら、わたしはアルバイトをすることにする」
 そこは、一日の終わりに姉妹の会議場と化す。
 居候のための布団と、貰い物の服を掛けるクロゼットしかない部屋。
 仲良く並べられた二つの布団の上に、二人で向き合って正座している。
「あるばいと?」
「そうだ。このままご厄介になるだけでは心苦しい」
 食費も馬鹿にならないしな。
 特にまくら。
「昔話のように巧くいけばいいが」
 行くわけがない。
「そういうことだ」
「??」
 まくらは一度好きなだけ?を飛ばして、それから聞いた。
「ましろちゃんが?」
 ぴく、と頬を引きつらせる。
 以前の『ましろ』の呼び捨てよりましと譲歩したのだが、まだ気に入らないらしい。
「そうだ」
「まくらは?」
「お前は、ただでさえ迷惑を掛けているのに、この上アルバイトなんかしたら余計な心労を掛けさせることになるだろう?」
 そういうのは姉の役目とばかりに彼女は言い切る。
「第一こないだは店のものを落として壊すし、なんだ?掃除もできないし」
 ぶつぶつ。
 小姑の説教のように続く姉の小言。
「…いいか、だから」
 くー。
「ねるな!」

  ぱかん

「わん、ましろちゃんがぶった!」
「ともかく、お前は黙って今まで通りにするんだ。いいな」

「…というわけ」
 くすんくすんといつの間にか涙目で訴えるまくら。
 ふーむ、と健太郎は腕を組んだ。
 そんなことを言われても、確かにまくらをバイトに出すのはちょっと(どころではない)。
 履歴書だって馬鹿にならない。
 ましろはそれらしい雰囲気で押し通せそうだが…
――どう見積もってもこいつ、子供だからなぁ
 見た目はそうでもないのだが、言動や仕草は子供のそれと変わらない。
 バイトってったって、ホントに知り合いのハニービーとかじゃないと危なっかしい。
 それに…
「気にするなよ、まくら」
 くしゃくしゃと頭を撫でてやって、視線を同じ高さにして覗き込む。
 小動物のような黒くてくりくりした目は澄み切っていて、作り物のように見える。
「ましろの居ない分、うちで働けばいいから」
 リアンはハニービーに出して、ましろがバイトに行けば五月雨堂は以前の居候二人と変わらない。
 手の空いている人間が少なくなるだけだ。
「…でも」
 むー、とまくらは眉を寄せた。
「まくら…」
「なんだ、働きたいんじゃないのか?」
 そこで何故か頬を染めて、こくこくと頷いた。
――…どうするか
 そもそも五月雨堂のような店に正社員もへったくれもない。
 スフィーは(実はアレはアレで)きちんと働いているが『店員』という肩書きである。
「よし判った。そう言うことならまくらを『五月雨堂職員』に命じる!」
 まくらはばんばん両肩を叩かれて、目を丸くして健太郎を見返していた。

 準備をするから、とまくらを店内へと向かわせる。
「まずは店の清掃から!」
 先輩店員のスフィーが先生。制服はどうやらメイドルックらしい。
 いつの間に着替えさせたのかまくらも同じ格好をしている。
 何か微妙に危なっかしい。
「はたきはこうかける、こう!」
 ばしばし。
「こう」
 ばしばし。
「違うこう!」
 ばしばしばし。
「こう?」
 ばしばしびしばし。
「待て待て待てっっ」

 閑話休題。

「うちはアンティークショップだから、壊れ物が多い。古いから店内の掃除は欠かさずやる必要がある」
 どうしようもないので結局健太郎が直接教えることにした。
 ちなみにスフィーは、涙目で頭を押さえて彼の後ろにいる。
「だからって、壊れるような掃除はしちゃだめだ。…わかるな」
「…うん」
 素直に頷くまくら。
「あとは、物が物だけにお客には丁寧に説明する。ほら、この辺の壺とかの見方は把握しなきゃだめだ」
 一通り説明した後、彼は今ここにある物の一覧と説明の入った書類を渡す。
「これだけは頭にいれなさい。誰が来ても、接客できるように」
「うわぁ…大変なんだ」
 書類を受け取って、しみじみという。
「大変じゃない仕事なんかないさ。…だから、それぞれの職業にはプロっていうものがあるんだから」
 ぽん、とまくらの頭を優しく叩いてやる。
 喉を鳴らす猫のように目を細めてくすぐったそうにして、彼女はもう一度顔を上げる。
「…なれるかな」
 健太郎を見てすぐ、手元の書類に目を落とす。
 やっぱり僅かに頬が紅い。
「頑張ってみればいいさ。…でも、もしどうしても続けられそうになければ止めれば良いんだ」
「がんばる」
 うん、と大きく頷いて笑みを浮かべた。


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