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オフの日に


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 ここで書かれている内容は、全て完全にフィクションであり、
実際に存在するキャラクターとはかけ離れていたりするようにしてます。
 もし『こんなの違う!』と思ってもそう言うことだから気にしないように。
 以上。
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 たまのオフ。
 でも、このオフという言葉にはいろいろ定義がある。
 たとえばネットの『オフライン』。
 たとえば仕事の『オフ』。
『今週末、うちオフなんや』
 大抵の場合、こういえば『休み』をさしているんだろうが…
 だから、普通女の子からこんな電話がかかってくれば即OKっなんだろうけど。
 実質、同人作家のオフなど、『同人作業』に費やされるためにある。
 休みなど、ない。
「えぇ〜」
 だから困る。
 由宇がこういう時は通常原稿をあげなければならない時だ。
『…なんや、文句あんのかい』
 携帯の向こうで青筋を立てる由宇の顔が浮かぶ。
 いつもぶんぶん振り回しているハリセンが見えるようだ。
「…ありません」
 かといって逆らえるはずもなく。
『ほな、待っとるさかいな』
「待ってるって、大阪か?」
『なにゆーとるんや。神戸や』
 ここからだったら一緒だっての。
 大丈夫、スケジュールなら頭の中に入っている。
 …今週?イベントは先週だぞ?
 ちなみに和樹のサークルは参加していないので修羅場は無かったが。
『泊まりなら心配いらんで。うち、いつも空いてるんやし』
 …これで彼女が普通の女の子だったら。
 由宇じゃ、一晩中いぢめられそうで嫌だ。
『ほな待っとるで〜』
「ちょ、まっ」

  ぷつ   つーつーつーつー

 だめだ。
 由宇相手では何があっても敵いやしないだろう。
 …多分。
 そう言う訳で、せっかくの金曜日に和樹は新幹線で憂鬱に過ごしていた。
 陰鬱した気分での聞き慣れたアニソンは、まるで読経のようだ。
 こうやってミイラになって、ミイラがミイラ取りになって、ばいおはざー…

  ぴろぴろぴろ

 携帯の発信音に慌ててヘッドホンを外して、ロビーに向かう和樹。
「はいもしもし」
『あー、うちやうち』
 猪名川の声だ。
「…何?」
 思わず刺々しく応えてしまう。
『そんな怖い顔せんでえーやん』
 いつもの調子のいい猫なで声が耳元をくすぐる。
「何言ってるんだ」
 顔なんか見えないだろうに。
『も少し顔、上げてみ?そ、も少し』
 和樹は眉を顰めて、ふと顔を上げた。
「はろ〜」
 目の端から、彼女が現れた。
 携帯を片手に持って。
「…お前なぁ」
「へへへ」
 笑った。
 …なんかおかしい。
 何がおかしいのかはっきりしないのだが、おかしい。
「なぁ、どこ座っとん?隣あいてへん?」
「自由席だけどさ」
「なぁな、隣座らせてぇな、ええやろ?なぁええやろ?」
 おかしい理由が判った。
 …こいつキャラ変わってる。
――よし
 和樹は腕組みして僅かに悪人笑みを浮かべる。
「よぉし、特別に許可しよう。ただーし、一つだけ条件がある」
 すると途端に由宇の表情がいつものごり押しする顔になる。
 一瞬、彼女の拳(つっこみ)が鳩尾に入らないかどうかひやりとした。
――やばいかも
 和樹は冷や汗を額に浮かべながら続ける。
「どうしてお前がここにいるのか、教えろ」

  どきどきどきどき

 むうと僅かに唸って、由宇はにぱっと笑みを浮かべた。
「なーんや、そんな事か。ええよ、教えたる。と・く・べ・つ・に」
 ずいっと身体を押しつけるように顔を近づけて、にやりと笑みを浮かべる。
――こ、怖い
 こんな時の笑みが、何より一番怖い。次に何が来るのか判らないからだ。
――関西の人間って、みんなこんなの何だろうか…
 それは誤解である。ここで訂正させてもらいたい。

 結局和樹の席に移ってから由宇は話し始めた。
 先週のイベントに参加して、ここ数週間修羅場だったらしい。
「…それとこれとどう関係あるんだ」
「だから、その帰りなんや」
 二人がけの新幹線の椅子。
 こうして座らせると、以外に小さいことに気がつく。
「ふーん」
「せやからオフやゆーたやろ?」
 そう言ってにぱっと笑う。
 …やっぱりおかしい。修羅場くぐって頭テンパっても変わらない奴だったのに。
 と、唐突に閃いた。
「伊達?」

  ぎくり

 由宇の顔が硬直する。
「ええ、何の話?」
「度が入ってないって事」
 由宇は困った顔をして、ずずっと引く。
 いや、引いても後ろには廊下ぐらいしかないぞ。
「な、何を根拠に」
「性格が変わってる」
 むう、と今度は胸の前で腕を組んで本気で困った顔をする。
「…そんなん、見える人には判らへんのや。なんも見えへんのがどんなに怖いか」
 ほお。怖いのか。
 和樹は思わず心の中でほくそ笑む。
「だからって眼鏡外すの嫌やん。眼鏡かけてると外した時目が小さなるって言うし」
 それは目の錯覚。
 普段でっかい眼鏡かけてるとそう言う風に見える物なの。
「…面白いこと気にするんだな」
「五月蠅い」
 少しふてくされた表情で、ふいとそっぽを向く。
 以外に可愛い。
 やっぱ少し気弱になった方がいいじゃねえか。
「んじゃ、外して見せろよ」
 何か弱み握ったみたいで少々強気な和樹。

  ぎろり

 あ、さすがに怒った。
 いや、いつもみたいな強引さというか、強気なところがないんであんまり怖くないけど。
 第一、顔が赤いぞ。
「嫌や。…くそ、覚えとれぇ。この屈辱必ず晴らさせて貰うからな」
「はいはい。できるもんならね」
 いや、多分覚えてて後でぼこられるんだろうな…
 と、和樹は思った。
 同じぼこられるんだったら、今のうちにいぢめた方が得だよな。
 可愛いし。
「でもまさか眼鏡忘れたとか言う訳じゃないよな」
「あー。そら、うちかてそこまで馬鹿やない。予備かて持っとった」
 ごそごそと鞄の中から眼鏡ケースを取り出す。赤い奴だ。
 かぱと小気味良い音を立てて開いた中から、ひん曲がった眼鏡が出てくる。
 レンズにはひびが入っている。
「ちょーっとばかり飲み過ぎてぇな」
「踏んづけたのか?」
「いや、あんまり不甲斐なかった男をぶちのめした時、そいつの背中で潰れた」
 …可愛くない理由だな。
「一つはうちが寝てる時にや。どんな状況か分かる思うけど」
 修羅場で寝てる時ってのは、机に突っ伏している時だ。
 気がつくと壊れたみたいにぱたんと落ちるって奴。
「あの眼鏡根性ないのんか、うちの顔の前でまっぷたつに折れて」
 言いながらプラスチックの太いフレームの眼鏡を出す。
 …成る程、真ん中からまっぷたつに折れてる。
「うちの右手に当たって折れたみたいで、人差し指の付け根、少し切れてた」
 言いながら絆創膏を貼った手を見せる。
 怖ぇ。
「うちな、眼鏡自分とこでしか作らへんねん。安いし、お得意さまやし」
 眼鏡の値段は安くても1万位する。
「…そうか。うーん…」
 和樹は肝心な質問をしていないことに気がついた。
「それでなんで俺を呼んだんだ?」
「うちの目の代わり。しばらく付きおーて貰うから」
 って、わざわざ俺を呼ぶなっ!

 数ヶ月後のこみパ当日、和樹は東館の一角で逆さ吊りにされていたそうな。
 発見された当時、何故か黒い布で目隠しされていたという。


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