5121小隊発足当初から、僅かに数日が過ぎた日の昼過ぎ。
「うわぁぁぁん、舞ぃぃ」
丁度飯でもと階段を下りようとしていた舞に、聞きたくない声が聞こえた。
「不気味な声で叫ぶな、この馬鹿者」
泣く子をぐーで殴るものだから、さらにぐすぐす泣くのはまぁ仕方がない。
御陰で泣きやむまで殴られるわけだが。
「判った判った。…それで、どうしたんだ」
「舞、僕ってそんなにしつこい?」
?
舞はあからさまに顔をしかめた。
まぁ彼女が不機嫌なのはいつものことだ。
別に変わったことではない。
「何が言いたいのだ」
「舞から見て、僕ってしつこい?」
むむう。
思わず唸る。
今ここで、この泣き顔のこいつを見ているのはいやだ。
何がいやなのか、それをちょっとりかいできないが。
でもともかく、しつこく食い下がられるのはいやだ。
「しつこくないぞ」
我ながら矛盾しているな、と思いながら答える舞。
その途端、単純に彼は顔を明るくする。
「ほんと?そう?よかったぁ」
彼が去っていくのをため息を付いて見守っていた。
次の日。
丁度登校してくるぽややんを見つけて、舞は彼に視線を向けた。
見てると、彼は頭に布らしきものを巻き付けた女の子に近づいていく。
――?あれは確か、森とか言う名の
嬉しそうに挨拶すると、森はくるっと振り向いて、挨拶を返した。
そこで思わず空いた沈黙に、森は言う。
「何間抜けな顔してるんですか。…早く教室に行きますよ」
がーん
間抜けな顔で悪かったな!どーせ僕はぽややんだよっ
とは口に出せず、プレハブ二階で舞とあったものの…
今度は泣きつけなかった。
舞は拳をふるふると振るわせて、今にも襲いかかりそうな雰囲気だった。
次の日、森は学校を休んでしまった。
しばらくの間、ぽややんは舞の剣幕に近寄ることもできなかったという。