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ぽややん速水君 第2話 はやみくんのひみつ


 ぽややんと呼ばれてもぽややんすまいるを絶やさない、我らがアイドルぽややん。
 挨拶代わりに男に抱きつかれて、真っ赤な顔で否定したり、『不潔です!』でおたおたしたり。
 だがそんな彼が、HRぎりぎりにしか登校しない理由はあまり知られていない。
 一度壬生屋にも注意されたにも関わらず、彼はそれを貫き通している。
 学校の校門に付く時刻は08:35、これを守らなかった日はない。
 ある意味時間を守っているというべきなんだろうが…
 今回はこの速水厚志の朝にかけられた呪いのような真実に迫る。

 朝、七時三十分。目覚ましにより起床。
「ふぁあああああ。やぁお早う舞」
 おーきく伸びをして彼は枕元に寝ている猫に声をかける。
 別に、当てつけではないようだが。
 服を着替えて、台所へ。
 今日の朝食は…
「オムレツとおみそ汁にしよう」
 不穏当な発言をしながら、彼はキッチンに向かう。
 冷蔵庫にしまった挽肉をバターで炒めて、あっという間に卵を落とす。
 へたに作るとただの挽肉入り卵焼きになるのだが、そこはそれ、熟練の主婦の腕が光って唸る。
 綺麗にラグビーボール状になったオムレツを皿の上に載せて、ケチャップをかける。
「うん、美味しそうだ」
 七時四十二分。
「いただきます」
 ご飯にオムレツ、みそ汁とコーヒーが並ぶ食卓。
 …どうやら食べたいと思った物を素直に並べただけのようだ。
 八時五分。
「あー、サンドイッチでも作っていこうかな」
 冷蔵庫を開けて、ハムを取り出す。
 慣れた手つきでスライスしていく。
 なかなか均一に切れる物ではないが、鼻歌を歌いながらすいすいと均等にばらしていく。
 パンにマーガリンを塗り、レタス、ハムを載せてマヨネーズ、マスタードをかける。
 スライスチーズで挟んで、パンを二つ重ね合わせる。
 包丁を変えて、パンを三角に切る。良くご家庭ではパンの耳を切り落とすまではするのだが、なかなか綺麗にはならない。
 彼は綺麗に二等辺三角に切りそろえて、綺麗にラッピングすると鞄に入れた。
 八時三十分。
「あー、急がなきゃ」

「いつもぎりぎりなんですね」
 これ以上早く起きれるものか!昨晩は六時まで起きてたんだぞ!
 とはおもうものの、彼はぽややんと笑って誤魔化した。 

 …つーか、どっちか止めたらいーんじゃないか?


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