滝沢と瀬戸口は、プレハブ校舎の裏でこそこそと何やら話をしている。
「…が…だ」
「……!」
丁度昼飯時で、誰も近くにいないし来そうにない状況。
まぁこんなところで昼飯にしよう何て考えてるのは、昼飯時に訓練する速水ぐらいだ。
「〜♪」
今日も尋常じゃない主婦の技でサンドイッチを作ってきた。
んで、いつものようにひょっこり顔を出してしまう。
「だから言ってるだろ、あいつはやめとけよ」
「なにっ…ちょ、瀬戸口」
滝川が何か言いかけて、ふと目を向けるともうそこには瀬戸口はいなかった。
「あ…あれ?」
「いやぁ坊や、こんなところに何しに来たんだい」
いつもの如く、速水の背中側から抱きついて囁いている。
…もしかして、音速を超えていたかも知れない。
「え、え?ちょ、ちょっと」
「顔なんか真っ赤にして、もう初だなぁ」
うりうりと頬に指を押し当ててぐりぐりする。
何かものすごく…変だと思う。
ほら、呆れたのか滝川も向こうで冷や汗垂らしてるぞ。
「僕、ちょっと体力に自身がないから」
速水、現在体力1000オーバー。
果たしてどれだけになれば彼は自信がつくというのだろうか?
いつものぽややんすまいるで言う。
「それより、今滝川と何か話してなかった?」
がびん
滝川、顔まっか。
「ああ」
瀬戸口は相変わらずぽややんの背中から抱きついたまま言う。
「石津が好きなんだってさ」
「お前言わないって言っただろうがっ」
滝川ぶちきれ。
でも瀬戸口はにやりと笑みを浮かべてくすくすと笑う。
「坊やは他人じゃないからさ」
ぼ
速水がまっかっか。
何故か滝川までまっかっか。
「まぁ冗談はともかく」
「冗談なら離れろよ」
冷静なつっこみが入るも、彼はへらへらと平気そうに笑いながらぽややんの頭を撫でる。
「そうか、滝川は、萌ちゃんが好きなんだ」
速水、お前大分ずれてるぞ。
まぁそのつっこみは置いておくとして。
滝川は焦る焦る。
「わわ、悪いかよ」
「うーん、ともかく俺はやめておいた方が良いと思うが」
そこでやっと速水から離れて、腕を組んで悩む振りをする瀬戸口。
「あんな呪い女、『…呪う…わ』とか言われてころされたらどーするの」
「ななにを言うんだ、そんな根拠もなくっ!」
いや、いつも言ってると思うが。
ぽん
「瀬戸口、それはないと思うぞ」
何故か『突如友情に目覚めた雰囲気』の速水が、ぽややんらしからぬ口調で言う。
…何故今になって?
滝川は感涙にむせんでたりするんだが。
「『呪うわ、血を吐きなさ〜い』って、ムージョ様調に言われたら、僕きっと凄いと思うんだ」
速水、極楽とんぼ決定。
その日の夜、なんとか速水と判別できた舞が、ただの肉塊のような彼を連れて帰ってあげました。